学校を彷徨う人体模型─理科室のホルマリン漬けの生物と美術室の踊るデッサン人形

学校の夜は特別だ。生徒たちの声や足音が消え、廊下は静寂に包まれ、月明かりだけが窓から差し込んでくる。この時間だけ、学校は別の顔を見せる。そして、その顔は一部の者だけが知る。

その日も、普通の一日が終わりを迎えた。生徒たちが帰宅し、教師たちもオフィスを後にした。校舎は静まり返り、そして「彼」が動き始めた。それは、理科室の角に静かに佇む、人体模型だった。

肺、心臓、腎臓、そして脳。普段は生徒たちの学習道具として使われる彼が、夜の学校で違う姿を見せる。動き始めるとき、彼の目は異常な輝きを放つ。その後、彼はゆっくりと腕を動かし、足を一歩前に出す。そして、彼はうろつき始める。廊下、教室、トイレ、図書館。学校中を彼が歩く。

彼が最初に動き出したのはいつからだろうか。それは誰にもわからない。しかし、彼が動くことを最初に見たのは、ある夜勤の警備員だった。彼は廊下の監視カメラで、理科室のドアがゆっくりと開くのを目撃した。そして、そのドアから出てきたのは、人体模型だった。まずは驚き、次に恐怖に襲われた警備員は、その映像を何度も再生したが、やはりそこには動く人体模型の姿が映っていた。

警備員はその事実を他の人に話すことはなかった。だれが信じるだろうか。しかし、彼はその夜以降、カメラの映像を見るのが恐ろしくなった。なぜなら、人体模型はカメラが向いている方向を向き、まるで彼を見つめているように見えたからだ。

その後も、人体模型は毎晩、学校をうろつき回った。そして、新たな夜の学校の話が始まる。それは、理科室のホルマリン漬けの動物たちが動き出すという話だった。これが第二部の始まりだ。

学校の夜は深まる。時計の針は深夜へと進み、月明かりもさらに薄暗くなった。人体模型の物語が広まる中、新たな動きが始まった。それは、理科室の一角、ホルマリン漬けの動物たちが動き出すという話だった。

人体模型がうろつくのと同じように、夜になるとホルマリンの中で静かに眠っていたはずの生物たちが目を覚ます。蛇、カエル、そして魚たち。彼らは静かにビンから出て、ゆっくりと学校の中を動き出す。

初めてその現象を目撃したのは、ある掃除スタッフだった。深夜、理科室の掃除をしていた彼女は、ふとした瞬間に、眼前のホルマリン漬けのビンの蓋が開いていることに気付いた。そして、そのビンからホルマリンに漬けられていたカエルがゆっくりと出てきて、床を這いずり始めた。

彼女はその場から逃げ出し、それ以降、理科室の掃除は拒否した。しかし、その話は彼女だけの秘密にはならなかった。その後も、夜の学校で働く人々の間で、ホルマリン漬けの動物たちが動き出すという話が広まっていった。

そして、その話は生徒たちの間にも広まった。彼らは昼間、理科室で学習する時、ホルマリン漬けの動物たちを怖がるようになった。そして、理科室には誰も近づかなくなった。昼間は学習の場、夜は別の世界。それが彼らの学校だった。

しかし、夜の学校の話はまだ終わらなかった。新たな話が広まり始めた。それは、美術室のデッサン人形が踊り出すという話だった。これが第三部の始まりだ。

学校の夜はさらに進行し、深夜から明け方へと移り変わる。月は西の空に低く横たわり、星々が明滅する。その間も、学校は静かに時間を刻み続ける。そして、新たな話が広まり始めた。それは、美術室のデッサン人形が踊り出すという話だった。

美術室のデッサン人形は、普段は生徒たちのデッサンの練習のために使われ、無生物として扱われている。しかし、夜になると彼らは違う姿を見せる。人形たちはまるで生命を得たかのように、ゆっくりと動き始める。

初めてその動きを目撃したのは、美術部の部員だった。彼女は夜遅くまで制作活動に没頭していた。突然、彼女は背後で小さな音を聞いた。振り向くと、デッサン人形が一人、ゆっくりと手を動かしていた。その動きはまるでバレエダンサーのように優雅だった。

驚いた彼女はまずは逃げ出したが、次の日、その事実を部員たちに話した。しかし、誰も信じなかった。だから彼女は証拠を得るために、再び夜の美術室に向かった。そして、彼女は見た。デッサン人形たちが踊り出す姿を。

それはとても美しい光景だった。デッサン人形たちはペアで踊り、まるで舞台の上のプロのダンサーのように見えた。彼女はその光景をスマートフォンで録画し、次の日、部員たちに見せた。

その映像を見た部員たちは驚き、そして恐怖に襲われた。しかし、それ以上に彼らは興奮した。彼らの美術室で起こる不思議な現象。それは彼らにとって、特別な経験だった。

しかし、この話はまだ終わりではない。美術室のデッサン人形が踊り出すという話が広まり始めた時、新たな話が広まり始めた。

学校の夜は最終章へと進む。夜明けの兆しはまだ見えず、静寂が校舎全体を覆う。それぞれの話が交錯し、学校は深淵のような存在と化していた。そして、新たな話が広まり始めた。それは最も恐ろしいとされる、校長室の話だった。

校長室は普段、生徒たちからは遠い存在で、敬意と畏怖を持って接される場所だった。しかし、夜になるとその場所が異様な雰囲気を醸し出し始める。その話を最初に耳にしたのは、校内のニュースを伝える学生新聞部の部員だった。

彼はその話を追求するため、夜の学校に潜入した。目的地は校長室だった。彼が校長室のドアを開けた瞬間、異様な光景が広がっていた。部屋の中央にある大きなデスクの上に、校長の肖像画が置かれていた。

その画像は普段の校長の姿とは異なり、目が真っ赤に輝いていた。そして、彼はその肖像画の口がゆっくりと動き、低い声で何かを囁いているのを聞いた。その声はまるで呪文を唱えるかのようで、彼はその場を逃げ出すことしか考えられなかった。

彼がその事実を学生新聞に掲載しようとした瞬間、校長から呼び出された。彼が校長室に向かったとき、彼は恐怖に震えていた。しかし、校長は彼を優しく迎え、彼が見たことについて語ることを求めた。

彼がその夜の事実を語り終えると、校長は深く頷いた。そして、校長は彼に語った。「それは私の先代、そしてその先代から受け継がれてきたものだ。それはこの学校の守り神であり、夜の学校を支配する存在だ。だから、それを恐れることはない。ただ、それを尊重し、理解しよう。」