炎に包まれる運命からの脱出─図書館司書が追求した自己発火現象の真実とその予防

街のはずれ、ひっそりとたたずむ旧市立図書館。その古びた建物の奥深く、多くの秘密が眠っていた。そこには、人々が忘れ去った古文書や書籍がぎっしりと詰まっている。そんな中、特に奇妙な古文書が一つ。その名も「スポンテニアス・ヒューマン・コンバッション」。

その古文書は、突如として人間が自己発火する現象について記されていた。読み進めると、その現象は予測不能であり、原因不明だとされていた。しかし、一定のパターンが見受けられるとも書かれていた。それは、自己発火現象が起こる前に必ず何らかの「予兆」が現れるというものだ。

文書によれば、自己発火現象に遭遇する人々は、事前に奇妙な体験をする。それは、一時的に体温が異常に上昇する、周りの人々が見えなくなる、あるいは時間の感覚が狂うなど、不可解な現象が起こるという。そして、それらの予兆が現れてから数日後、突如として自身の体が炎に包まれ、燃え尽きてしまうというのだ。

この古文書を読んだのは、図書館に勤める若き司書、葉山隆一だった。彼は古文書の探索が趣味で、休日も図書館の奥深くに潜り込んでは知識の宝を求めていた。彼はこの古文書を読んだことで、自己発火現象の存在に興味を持つようになった。しかしこの時点では、彼はまだ、この現象が自身の運命を大きく左右することになるとは思いもしなかった。

そして数日後、葉山は奇妙な体験をする。それは、体温が突如として上昇し、自分が熱に包まれているかのような感覚に襲われるというものだった。彼は驚きながらも、古文書で読んだ自己発火現象の「予兆」を思い出した。

…

驚愕と混乱の中、葉山は自己発火現象の予兆と繋がる自身の症状に恐怖を感じた。しかし彼は、ただ無力に立ち尽くすのではなく、秘められた真実に迫る決意を固めた。

彼は、古文書に記されていたスポンテニアス・ヒューマン・コンバッションの詳細を再度確認し、手がかりを探した。しかし、それ以上の情報は見つからなかった。そこで彼は、図書館の膨大な情報資源を使い、自己発火現象についての研究を始めた。

地元の新聞の過去記事、科学雑誌の古い号、さらにはインターネットの深淵にまで手を伸ばした。彼が見つけた情報は、古文書に書かれていたものと共通する部分が多かった。自己発火現象の犠牲者たちは、皆、何らかの予兆を経験し、その後に突然炎に包まれていた。

だが、その原因については、依然として謎に包まれていた。科学的な説明はなく、超自然的な力や未知の生物の仕業だと主張する者もいた。しかしその中には、一つだけ共通点があった。それは、自己発火現象が起きた場合、その炎は人間の体だけを焼き尽くし、周囲はまったく無傷であるという現象だった。

葉山は、この奇妙な現象を解明するために、医学や物理学、心理学、さらには神秘学まで幅広く調査を進めた。それでもなお、自己発火現象の真相に迫ることはできなかった。

そんな中、再び体温の上昇を感じる日が訪れた。それは前回よりも強烈で、彼の体は熱で焼けるようだった。それと共に彼は、人々が見えなくなる、時間の感覚が狂うといった予兆も経験した。そして、彼は確信する。自分が次の自己発火現象の犠牲者になるのではないかと。

…

体験した予兆は、自己発火現象が近いことを葉山に告げていた。彼の恐怖は頂点に達し、しかし、彼は絶望に陥ることなく、自己発火現象の解明に向けて調査を続けた。

彼の日々は図書館の古書やインターネットの奥深くに埋もれ、膨大な情報を探し続けることに費やされた。それでも、彼が見つけたのは、自己発火現象の謎をさらに深める情報ばかりだった。

そんなある日、葉山はある文献に出会った。それは、自己発火現象の研究をしていたという科学者の論文だった。その科学者は、自己発火現象は人間の精神的なストレスや感情が引き金になるという仮説を立てていた。彼はその仮説を基に、自己発火現象の予防法を模索していたようだった。

葉山は、この情報を手掛かりに新たな調査を開始した。彼が集めた情報から、自己発火現象の犠牲者の多くが、現象直前に強いストレスや感情を抱いていたことがわかった。そして、葉山自身も、自己発火現象の予兆が現れた時、深い恐怖や焦りを感じていた。

彼は新たな希望を見つけ、自己発火現象の防止策を模索した。彼の調査によれば、精神の安定やリラクゼーションが重要だとされていた。それにより、自己発火現象を引き起こす可能性がある感情をコントロールできるかもしれないと考えた。

葉山は、ヨガや瞑想などのリラクゼーションを学び始めた。彼は身体と心のバランスを保つことで、自己発火現象の予兆に立ち向かった。それでも、彼の体温は異常に上昇し、視界が歪んだり、時間の感覚が狂ったりすることがあった。

…

日々のリラクゼーションと心の平穏を追求することにより、葉山の体調は少しずつ安定していった。自己発火現象の予兆は依然としてあったが、彼の心は驚くほど落ち着いていた。

葉山は、心の平穏が自己発火現象の予兆を抑えることに一役買っていると確信した。彼の持論は、自己発火現象は精神的な状態が引き金になるというものだった。

そしてついに、その日がやってきた。彼の体温が急激に上昇し、視界が歪み、時間の感覚が狂い始めた。しかし、彼は慌てず、心を落ち着け、リラクゼーションの技法を用いて感情をコントロールした。彼の心は、自己発火現象に立ち向かう覚悟で満ちていた。

しかし、何も起きなかった。予兆は消え、彼の体は再び正常な状態に戻った。自己発火現象は起こらなかったのだ。

それから数日後、葉山は図書館で自己発火現象についての新たな論文を書き始めた。彼の経験と調査をもとに、自己発火現象の新たな理論と予防策を世界に発信することを決意した。

彼の調査はまだ終わっていない。しかし、彼は新たな希望を見つけ、自己発火現象の真実に一歩近づいたことを信じていた。そして、彼の物語は、新たな伝説として図書館の歴史の一部となり、スポンテニアス・ヒューマン・コンバッションという現象を未来へと繋げていくのだった。