深夜、嵐の音が古びた精神病院の壁を打つ。病院の中心には、神秘的な力を持つとされる本「ドグラ・マグラ」が鎮座していた。その本は、病院の創設者が遺したもので、一部のスタッフだけがその存在を知っていた。
ある夜、新しく病院に赴任した若き医師が、運命的な出会いによって「ドグラ・マグラ」の存在を知る。彼は好奇心からその本を手に取るが、ページを開くと、突如として自分の意識が別の世界に引きずり込まれる。
彼が目覚めると、見知らぬ病室にいた。そして彼の目の前には、自分が治療していた患者たちがいたが、彼らは皆、彼が未だ見たこともない異常な行動を見せ始める。彼らは彼に向かって、「あなたが次だ」と囁く。
…
彼は自分が患者たちの予言の意味を理解しようとしたが、その頃には彼の意識は既に「ドグラ・マグラ」の呪縛から逃れられなくなっていた。彼の頭の中には見知らぬ記憶が次々と浮かび上がり、彼は自分がこれまでと全く違う人間だったことを思い出す。その記憶は彼にとって全く新しく、しかし同時に奇妙な親しみを感じるものだった。
病院の創設者である彼の先祖の記憶が次々と彼の心に現れる。彼の先祖は「ドグラ・マグラ」を通じて、自身の意識を未来へと送り続けることを目論んでいた。その計画は成功し、彼の意識は何世代にもわたり継承されてきたのだ。
患者たちは彼に囁く。「あなたが次だ」と。彼はその意味を理解し、恐怖と共に自身の運命を受け入れる。しかし彼は決してあきらめることはなかった。彼は自身の意識を取り戻すために、自身の心の中にある迷宮へと足を踏み入れることを決意する。
…
深い眠りに落ち、彼は自分の意識の迷宮を彷徨い始める。彼が見たのは、過去の自分、現在の自分、そして未来の自分。彼はその全てを見つめ、自分自身を理解しようとする。
それぞれの自分たちは、「ドグラ・マグラ」の影響を受けていた。しかし彼はそれら全てを受け入れ、自分自身の中にある強大な力を解放する。その力は彼の意識を迷宮から解き放ち、現実へと引き戻す。
彼が目覚めると、病院は静寂に包まれていた。彼は「ドグラ・マグラ」を手に取り、そのページをゆっくりと閉じる。その瞬間、病院全体が一瞬明るく照らされたかと思うと、すぐに元の暗闇に戻る。しかし、その暗闇は彼にとってはもはや恐怖ではなく、新たな希望と新しい始まりを感じさせるものだった。
彼は患者たちに微笑みを向け、「次は僕だ」と言った。その言葉は、新たな始まりを告げるものだった。そして「ドグラ・マグラ」は、その新たな物語を待ち続ける。
つづく
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