東京のどこかにあるとされる一軒家。家の主、高齢の男性は普通の生活を送っていた。しかし、彼には不思議な習慣があった。毎月、一度だけ地下室に入り、何かを確認する。息子たちは常に疑問に思っていたが、父はその理由を教えてくれなかった。
ある日、父が亡くなり、息子たちは地下室の鍵を手に入れた。初めて地下室に足を踏み入れると、そこには何百もの金庫が並んでいた。息子たちは驚き、その中身を確認することにした。
金庫の一つを開けると、そこにはいくつもの紙幣が詰め込まれていた。息子たちはその紙幣を見て驚愕した。なぜなら、それは1968年に行方不明になった三億円強奪事件のお札だったからだ。
その他の金庫も開けてみると、それぞれが1968年の紙幣で一杯になっていた。息子たちは混乱し、父がその事件の犯人であった可能性を疑うようになった。
しかし、父が犯人であるという証拠は何も見つからなかった。それどころか、事件当時父は海外にいて、犯行に関与する余地はなかった。それなのに、なぜこれほどの量の紙幣が家に隠されていたのか。息子たちは父の秘密を探る旅に出ることを決意した。こうして、三億円事件と息子たちの奇妙な旅の幕が開けたのだった。
…
息子たちは父の過去を調査することから始めた。父が海外にいた証拠、その旅行の詳細、そして帰国後の行動。しかし、何もかもが普通の一市民の行動に見え、事件との関連性は見つからなかった。
次に、息子たちは地下室の金庫に隠されていた紙幣を詳しく調べることにした。紙幣には番号が書かれていて、その番号を使って発行元を調べることができた。しかし、驚くべきことに、その紙幣は全て1968年に発行され、その後行方不明になった三億円と同じ番号だった。
息子たちは紙幣の出所を追求し、遂には事件を担当した元刑事に会うことになった。彼は老齢で、事件の詳細はほとんど忘れていたが、一つだけ覚えていることがあった。
それは、事件当時、調査中に紛失した一部の紙幣の存在だった。その紙幣は事件の捜査資料として保管されていたが、ある日突然、保管場所から姿を消していた。その紙幣の番号は、息子たちが見つけた紙幣の番号と一致した。
息子たちは父がその紛失した紙幣をどうやって手に入れたのか、そしてなぜそんなことをしたのかを理解しようとした。しかし、その答えは一切見つからなかった。
その夜、息子たちは父の遺品を整理していた。その中には、父が若い頃に書いたと思われる日記があった。息子たちはその日記を開き、父の若い頃の秘密を知ることになった。
…
日記の最初のページは父が若かりし日の冒険心溢れる記述で始まっていた。父は大学で警察学を専攻しており、特に興味を持っていたのが、解決されなかった犯罪事件だった。
そして、ある日の記述が息子たちの目を引いた。その日、父は友人と一緒に警察学の実習で警察署を訪れていた。その警察署には、三億円事件の未解決資料が保管されていた。そして、その日、警察署から紛失した紙幣が消えた日だった。
日記によると、父と友人は署内の手続き中に、紙幣が保管されている場所を偶然目撃していた。そして、父は友人と賭けをしてしまう。それは、警察の厳重な監視下にある紙幣を持ち出すことができるか、という賭けだった。
結果として、父は警察の隙をつき、紙幣を持ち出すことに成功した。しかし、その行動の結果がどれほど重大なことかは、その時の父には全く理解できていなかった。
息子たちは父の若さと愚かさに驚き、同時に父が紙幣を持ち出す動機を理解した。父は事件に関与していたわけではなく、ただの冒険心から、警察の目を欺いて紙幣を持ち出したのだ。
そして父は、その後の罪悪感と恐怖から、紙幣を地下室の金庫に隠し、一生その秘密を胸に秘めて生きることを選んだのだ。
息子たちは父の秘密を知り、遺産としての三億円を警察に返却することを決意した。そして、父の過去の行動を受け入れ、彼の記憶を尊重することにした。こうして、長い間隠されていた三億円事件の一部の真実が明らかになり、息子たちの奇妙な旅は終わったのだった。
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