ある日の夕暮れ時、都会の片隅にあるとある高校に、一つの都市伝説が囁かれ始めた。その名も『白い手の幽霊』。この話は、ある雨の夜に学校の廊下を歩くと、突然、壁から現れる白い手に引きずり込まれ、二度と姿を見せなくなってしまうという恐ろしいものだった。
この高校は、かつて校舎の一部が火事で焼け落ち、幾人かの犠牲者が出たことがあった。それ以降、その場所には何も建てられず、ただ廃墟のような空間が広がっていた。そして、この場所が『白い手の幽霊』の出現する場所と言われていた。
ある日、学校のバスケットボール部の主将・リョウが、部員たちと練習を終え、教室へと戻ろうとしていた。しかし、その日は何とも激しい雷雨が降っており、リョウは校舎の中を濡れないように気をつけながら歩いていた。すると、廃墟となった場所の近くを通りかかった瞬間、リョウは突然、壁から現れた白い手に気づいた。
リョウはその場で硬直し、恐怖に身がすくんだ。しかし、白い手はリョウの腕を掴み、彼を壁の中へと引きずり込もうとした。リョウは必死に抵抗し、声を振り絞って助けを呼んだ。その声を聞いた部員たちが駆けつけたが、リョウの姿は消え、残されたのは彼の叫び声だけだった。
翌日、リョウが行方不明になったことが学校中に広まり、『白い手の幽霊』に巻き込まれたのではないかという噂が立ち始めた。カナは、リョウの失踪事件を解決するため、調査を開始した。
彼女は図書館で過去の新聞記事や資料を調べ、白い手の幽霊の目撃情報や、火事で焼け落ちた校舎にまつわる情報を集めた。その過程で、カナはある犠牲者の遺品が、学校の地下室に保管されていることを突き止めた。カナは、その遺品が事件の手がかりになると考え、地下室へと向かった。
地下室は暗く、湿気が立ち込める場所だった。カナは怖さを押し殺し、勇気を振り絞って奥へと進んでいった。やがて、彼女は犠牲者の遺品が置かれた場所に辿り着いた。そこには、犠牲者である少女が描いた絵画が残されていた。その絵には、白い手を持つ幽霊が描かれており、まるで彼女がその存在を予知していたかのようだった。
カナは絵画を持ち帰り、研究を始めた。彼女は、絵の中に隠された暗号のようなものを発見し、それを解読しようと試みた。そして、その暗号から、幽霊がかつての火事で亡くなった少女の無念の思いが具現化したものであり、彼女の遺品を正しい場所に戻すことで幽霊が消えることが分かった。
カナは、白い手の幽霊が少女の無念の思いが具現化したものであることを学校中に広め、生徒たちが少女に祈りを捧げるようになった。そして、カナは遺品である絵画を、火事で亡くなった少女の墓前に持ち込み、そこに戻すことにした。
しかし、その夜、またしても雷雨が激しく降り始め、カナは墓地へ向かう道中で、白い手の幽霊に襲われる。彼女は必死に逃げ回り、ついに墓地にたどり着いた。カナは絵画を少女の墓前に置き、祈りを捧げた。
突如雷が光り、その場に白い手の幽霊が現れた。しかし、今度の幽霊は怒りに満ちた表情ではなく、どこか安堵した様子でカナを見つめていた。幽霊はカナに感謝の言葉を述べ、彼女の前から姿を消した。同時に、激しい雨も止み、空には美しい虹がかかった。
その後、カナはリョウがどこにいるのか、幽霊からの手がかりを探し続けた。そして、ある日、学校の廃墟にある隠された地下通路を発見した。地下通路の奥には、リョウが閉じ込められている部屋があった。彼は無事で、カナの助けを待っていたのだ。
カナはリョウを救出し、二人は学校に戻って他の生徒たちに無事を知らせた。リョウの失踪事件が解決されたことで、学校中に歓喜の声が上がり、カナはみんなから称賛された。そして、白い手の幽霊は二度と姿を現すことはなかった。
リョウが救出されたことで、学校の雰囲気は一変し、生徒たちは安心して過ごせるようになった。また、火事で亡くなった少女に対する祈りや思い出話も校内で語り継がれ、彼女は忘れ去られることはなかった。
それから数年後、カナとリョウは卒業し、それぞれの夢を追い求める道へと進んだ。しかし、彼らはその後も時折、高校時代の友人たちと集まり、白い手の幽霊にまつわる恐ろしい思い出を語り合った。そして、彼らはあの恐怖の日々を乗り越えた経験から、困難な状況に立ち向かう勇気と希望を持ち続けたのであった。
コメントを残す