時を超える旅人─ポタラ宮の秘密と都市伝説。間を繋ぐ神秘的な黒い石と消えた知識の僧の謎

始まりは遥か昔、幾つもの世紀が過ぎ去った頃。強力な君主が治めていた時代、ラサの地に立派な宮殿、ポタラ宮が建てられた。それはチベットの魂の象徴、政治と宗教の中心として君臨していた。しかし、その宮殿の奥深くには人々の知らない秘密が隠されていた。

ポタラ宮の建設中、無数の僧侶と労働者が奇妙な現象を報告し始めた。彼らは作業中、突然時間が停止する感覚に襲われ、実際には数分しか経っていないはずなのに、一時間、あるいはそれ以上が経過したかのように感じた。その現象はランダムに起き、誰にでも起こる可能性があった。

また、彼らは奇妙な音を聞くことも報告した。それは深夜にだけ聞こえ、甘いメロディのようでありながら、同時に不安を掻き立てるような音だった。音源は特定できず、その音が響くとき、作業者たちは一斉に作業を中止し、怯えながらその音が消えるのを待っていた。

しかし、最も奇妙なのは、建設中に見つけたとされる「黒い石」だった。それはポタラ宮の最下部から見つけ出され、表面は滑らかで、中には紫色の輝きを放つ結晶が含まれていた。この石を見つけた労働者は、その夜、奇妙な夢を見たと言った。それは自分が別の存在になり、遠い星々を旅している夢だった。そして目覚めると、彼は自分が数日前に覚えていた以上の知識を得ていたと語った。

これらの現象は建設が完了するまで続き、その後もポタラ宮の深くには不思議なエネルギーが漂っていたという。しかし、それらの現象の真実は誰にもわからなかった。

時間が経ち、ポタラ宮はチベットの心臓部として君臨し続けていた。しかし、初めの奇妙な現象は消えず、それどころか、さらに深く、未知の領域に広がっていった。

ある夜、宮殿の番人が一人の若い修行僧を見つけた。彼は深夜にもかかわらず、ポタラ宮の地下深くにある黒い石の部屋に立っていた。彼の目は閉じており、体は微かに光っていた。その瞬間、彼は地球を離れ、未知の宇宙を旅しているかのように見えた。番人が驚いて彼に声をかけると、修行僧は突然目を開き、何も覚えていないと言った。

数年後、同じ修行僧は、信じられないほどの知識を持つようになった。彼は古代の言語を話し、未来の出来事を予見し、過去の出来事を詳細に説明することができた。人々は彼を「知識の僧」と呼び、彼の予言や教えを聞くために全国から訪れた。

しかしその一方で、宮殿の深くから聞こえてくる奇妙な音はますます強くなり、さらに不可解な現象が起こり始めた。夜になると、宮殿全体が微かに揺れ、黒い石が静かに輝き、周囲の空気が重くなることが報告された。

また、一部の僧侶や訪問者は、時間が停止したかのような感覚を経験し、自分が他の場所や時間に存在しているかのように感じることがあった。それらの体験者は、この現象を「時間の井戸」と呼び始めた。誰もその原因を理解することはできず、それがどのようにして起こるのか、そしてなぜ起こるのかは未だに謎に包まれていた。

年月が流れ、ポタラ宮の都市伝説は伝えられ、語り継がれていった。しかし、それらの神秘的な現象はまだ続いていた。そして、ついにある出来事が起こった。

ある日、知識の僧が突然消えた。彼はポタラ宮の中で最後に見られてから、どこにも姿を現さなくなった。人々は彼を探し、しかし彼はどこにもいなかった。そして、その夜、宮殿全体が揺れ、黒い石が強く輝き、そして奇妙な音が全てを貫いた。

その翌日、人々が黒い石の部屋に向かったとき、彼らは何かが違うことに気づいた。黒い石は以前よりも明るく輝き、その中には新たな紫色の結晶が見えた。そして、その石の側には、知識の僧が書いたと思われる古代の言葉で記された一枚の紙が残されていた。

その紙には、「私は旅に出ます。星々の間を巡り、知識を求めます。私の体はここにはありませんが、私の精神はこの石とともに永遠に生き続けます。」と書かれていた。

その後、ポタラ宮の奇妙な現象は次第に消えていった。時間の停止、奇妙な音、揺れる宮殿、全てが平穏を取り戻した。しかし、黒い石は今でも宮殿の地下深くに静かに輝いている。

これがポタラ宮の都市伝説、最終部である。知識の僧の消失とその後の静寂は、彼が真実を理解し、新たな旅に出た証であるかもしれない。そして今でも、彼の精神は黒い石とともに、遥かな宇宙を旅していると信じられている。


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