長い間、アルゼンチンのぺリト・モレノ氷河は、その壮大な景色と氷河が持つ圧倒的な美しさで世界中の観光客を魅了してきました。しかし、氷河の美しさの裏には、地元住民たちによって語り継がれてきた、ある都市伝説が隠されていました。
20世紀初頭、有名な探検家フェルナンド・ソトは、ぺリト・モレノ氷河の未踏の領域への挑戦を決意しました。彼は、氷河の奥深くに古代文明の遺跡が眠っているという噂に強い興味を持っていました。その噂によれば、かつてこの地には、氷河の力を操ることができると言われる高度な文明が栄えていたとされていたのです。
フェルナンドは、信頼できる仲間たちとともに、この壮大な氷河の探検に出発しました。彼らは、厳しい寒さや危険な氷河のクレバスを乗り越え、未知の世界へと足を踏み入れました。何日もかけて進んだ彼らは、とうとう氷河の中心部にたどり着くことができました。
そこには、予想外の光景が広がっていました。氷河の底から、青白く光る巨大な水晶が突き出していました。その水晶は、まるで氷河を支配しているかのように、その周りに螺旋状の氷の柱が立ち並んでいました。フェルナンドは、これこそが古代文明の遺跡であり、氷河を操る力の源だと確信しました。
しかし、彼らがその場を後にしようとした瞬間、突如として氷河が動き始めました。まるで生き物のようにうごめく氷河は、探検隊のメンバーを次々と飲み込んでいきました。フェルナンドは必死に逃げようとしましたが、最後には彼もまた氷河に捕らわれてしまいました。
…
フェルナンド・ソトが氷河に捕らわれてから数十年後、彼の孫であるカルロス・ソトは、祖父が遺した探検の記録を読み、氷河の秘密を解き明かすことを決意しました。カルロスは、その古代文明の遺跡がどのようにして氷河を操っていたのか、そして祖父たちが何故氷河に捕らわれたのかを知りたかったのです。
カルロスは、祖父の探検の記録を元に、地元のガイドや氷河研究者とともに、再びぺリト・モレノ氷河へと挑みました。彼らは困難な道のりを進み、ついに祖父がたどり着いた場所までたどり着くことができました。
そこには、青白く光る巨大な水晶と螺旋状の氷の柱が残っており、祖父の記録とまったく同じ光景が広がっていました。カルロスたちは、水晶の周囲を調査し始めましたが、突然謎の声が響き渡りました。
「汝らが何を求める、か?」
驚くカルロスたちの目の前に、氷から現れた美しい女性の姿がありました。彼女は、かつてこの地に存在した古代文明の末裔であり、氷河の守護者であると名乗りました。彼女は、氷河の秘密を知り、それを利用しようとする者たちを阻止するために、永遠に氷河に閉じ込められていたのです。
カルロスは、祖父の行方や氷河の力について質問しましたが、守護者は答えることを拒否しました。しかし、彼女はカルロスに一つだけ警告を与えました。
「この氷河の秘密は、汝らの手にかかれば災いをもたらすだろう。これ以上、深入りすることなく、立ち去るがよい。」
彼女の言葉を無視し、カルロスは氷河の謎を追求し続けることを決意しました。
…
カルロスは、氷河の守護者の警告を無視し、真実を追い求め続けました。彼は、地元の伝承や文献を調査し、氷河を操る力の源となる水晶に関する情報を集めました。やがて、ある古代文献に記されていた、水晶の力を解放するための呪文を見つけ出すことに成功しました。
カルロスは再びぺリト・モレノ氷河を訪れ、水晶の前で呪文を唱えました。すると、氷河全体が揺れ動き始め、氷が割れ、激しい風が吹き荒れました。突如、氷河が割れた場所から、フェルナンド・ソトと彼の仲間たちが次々と姿を現しました。彼らは、氷河の魔力によって時が止まっていたため、何十年もの間、氷の中で生き続けていたのです。
守護者は現れ、カルロスに激怒しました。彼女は言いました。
「汝が呪文を唱えることで、氷河のバランスが崩れ、遥か昔に封じられた悪しき力が解き放たれてしまった。これで氷河は再び動き、多くの命が失われることとなるだろう。」
カルロスは、祖父を救い出すために、氷河の力を手に入れることに成功したものの、その代償として、世界に大きな災いをもたらしてしまうことになりました。
それ以降、ぺリト・モレノ氷河は、ますます不安定になり、激しい氷河崩壊が相次ぐようになりました。そして、今もなお、氷河の奥深くには、古代文明の秘密と、その代償を背負ったソト一族の過ちが眠っているのです。
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