真夜中のエレベーター─13階への呪われた旅路と犠牲になった英雄の伝説

あるビルには、都市伝説が語られていた。このビルのエレベーターは、真夜中の0時にだけ、13階へとたどり着くことができると言われている。通常、エレベーターのボタンパネルには13階の表示がなく、12階から14階へと続くようになっている。だが、0時になると、突如として13階のボタンが光り輝き、その存在を示すのだという。

ある夜、仕事終わりのサラリーマンが、ビルのエレベーターで帰宅しようとした。彼はいつものように、エレベーターのボタンを押し、待っていると、ちょうど真夜中の0時が近づいていた。彼がエレベーターに乗り込んだ瞬間、時計の針が0時を指し示すと、エレベーターのボタンパネルに光る13階のボタンが現れた。

彼は半信半疑で、13階のボタンを押してみると、エレベーターはゆっくりと上昇し始めた。そして、12階を過ぎると、エレベーターは急に速度を増し、13階へとたどり着いた。ドアが開くと、そこには普通のフロアとは異なる、薄暗く不気味な雰囲気が漂っていた。

彼は恐る恐るエレベーターから降り、そのフロアを探索し始める。しかし、どの部屋も空っぽで、ただ廃墟のような光景が広がっていた。そして、彼がふと窓の外を見ると、ビルの外観が普段とは違うことに気づく。まるで、あの世と現世が交差するかのような幻想的で不思議な光景が広がっていた。

彼は不安に駆られながらも、13階の謎に引かれて、さらに奥へと進んでいった。その先には、彼が想像もしない驚愕の出来事が待ち受けていた。

彼が恐る恐る廃墟のような13階を探索していると、突然、奥から聞こえるかすかな足音が聞こえた。彼はその音に導かれるように進むと、見知らぬ女性が立っていた。彼女は黒いヴェールに包まれ、謎めいた雰囲気を醸し出していた。

女性は彼に向かって静かに囁いた。「お前は運命の人。私をこの呪われた13階から解放してくれ。」彼は女性の言葉に戸惑いながらも、彼女がどうしてここにいるのか、どうして解放される必要があるのか尋ねた。女性は彼に向かって、こう語り始める。

「私はかつて、このビルで働いていた。しかし、ある日突然、私はこの13階に閉じ込められてしまった。この13階は、普通の世界とは違い、時が止まっている。私はここで永遠に苦しむ運命なのだ。しかし、伝説によると、運命の人が私を解放すれば、私はこの呪いから逃れることができる。」

彼は女性の話に心を打たれ、彼女を助けることを決意した。しかし、彼女を解放する方法は不明で、彼はどうすればいいのか途方に暮れていた。すると、女性は彼に向かって、もう一度囁いた。「真夜中の0時に、このエレベーターで13階を目指す者が現れた時、彼は私を解放できる。ただし、その者は自分の命と引き換えにすることになるだろう。」

彼は自分の命と引き換えに、果たして彼女を救えるのだろうか。彼は苦悩しながらも、女性を救うための決断を迫られていた。そして、彼は選択をする。それは、彼自身の運命を変える選択だった。

彼は女性を助けることを決意し、自らの命と引き換えに彼女を解放する覚悟を決めた。彼は女性に告げた。「私はあなたを助けます。どんな代償が待っていようと、あなたをこの呪われた場所から解放します。」

女性は涙を流しながら彼に感謝し、彼にエレベーターに乗るように告げた。彼らはエレベーターに乗り込み、再び13階のボタンを押した。すると、エレベーターは揺れ動き始め、13階を出発し、現世へと向かって上昇した。

エレベーターが現世に到達する直前、女性は彼に微笑んだ。「ありがとう、あなたのおかげで私は解放されます。しかし、忘れないでください。あなたは私と引き換えに自分の命を失うことになるでしょう。」

彼はその言葉に涙が溢れ、最後に女性と抱擁を交わした。その瞬間、エレベーターは現世に到着し、ドアが開いた。女性は彼の手を離れ、現世に飛び出していった。

彼はエレベーターに残り、自分が運命の決断を下したことを悟り、涙を流した。その後、エレベーターは再び13階へと戻り、彼はそのまま消えてしまったと言われている。

以降、ビルのエレベーターでは、真夜中の0時に13階のボタンが現れることはなくなった。そして、その都市伝説は時の経過とともに語り継がれていく。彼の犠牲によって、女性は救われ、13階の呪いは解かれたのだという。

だが、そのビルで働く人々は、今でも時折、エレベーターの中で彼の姿を見かけると言う。彼は、自分の命を犠牲にして女性を救った英雄として、永遠に伝説となったのだった…


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ:

  • 禁断の電話番号と青春の心霊体験。恐怖の淵からの覚醒と真実の追求の壮絶な記録

    秋田県の小さな町に住む高校生、健太は、友人のゆりから珍しい電話番号を教えてもらった。それは「0123-456-789」という一見、普通の番号だった。しかし、その番号には特別な都市伝説が結びついていた。福岡県の心霊スポット「犬鳴トンネル」の公衆電話に直接つながるという恐ろしい話だった。そして、つながってしまった者は必ず死ぬという話まで。健太はゆりからその話を聞いた時、初めて都市伝説の存在を知った。


  • 紫の蝶の神秘─古代神社の秘密と都市伝説が紡ぎだす恐怖と美しさの試練

    雨が窓ガラスを叩き、雷が空を引き裂いていたあの夜、松尾は薄暗い部屋で何気なく手に取った古い本に目を通していた。その本は「幻の紫の蝶」と題された、古風な表紙の一冊だった。本の中には、かつてこの街に実在したとされる、美しくも神秘的な紫の蝶に関する記述がびっしりと詰まっていた。


  • 消えた乗客の謎─雨の夜に現れ消えた女性とタクシー運転手の不思議な遭遇

    都市の深夜、雨の音だけが交差点を埋め尽くす。街灯の灯りが路面に反射し、車のフロントガラスを横切る雨粒がキラキラと光っていた。そこに一台のタクシーが静止していた。 運転手は眠そうな目をこすりながら、不毛な夜を過ごすためのアイドルのラジオトークを聞いていた。突然、彼の目に映ったのは、雨に濡れた女性の姿だった。彼女は絶望的な表情で手を挙げ、タクシーを止めていた。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です