あるとても普通の家庭に、中学生の優子と小学生の太郎という兄妹がいました。ある晩、両親が出かけている間、優子と太郎は一緒に宿題をしていました。外は雨が降りしきる、まさに怪談にふさわしい夜でした。
風呂に入ろうとした優子は、バスルームのドアを開けた瞬間、何かがおかしいことに気づきました。換気扇から、何やら不思議な囁きが聞こえていたのです。
「お姉ちゃん、なに?その音?」太郎が不安そうな顔で尋ねました。優子は顔をしかめながら耳を澄ませ、囁きの正体を探ろうとしました。
囁きは、どうやら古い詩のようなものに聞こえました。まるで、その言葉には何らかの力が宿っているかのようでした。
「きっと、風が吹いて換気扇が鳴ってるだけだよ。」優子は弟を安心させようと言いましたが、心の奥底では何かが不安にさせられていました。
…
次の日、学校から帰宅した優子は、再び風呂場に向かいました。そして、またその不思議な囁きが聞こえてくるのです。今度は、囁きがさらにはっきりと聞こえました。まるで、だれかが呼んでいるかのようでした。
優子は、友達に相談しようと思いましたが、恥ずかしくて言い出せませんでした。代わりに図書館で調べてみることにしました。
何日か調べた後、優子はある古い民話に出会いました。それは、風呂場の換気扇の裏に封じ込められた祟り神が、囁きで人々を呪い、恐怖に陥れるという話でした。
「まさか、これが私たちの家にも…?」優子は背筋が凍る思いで、その民話を読み進めました。そして、その話の中には、囁きを止める方法が書かれていました。しかし、その方法はあまりにも恐ろしく、優子はどうしても実行する勇気が出ませんでした。
…
優子はその怖ろしい方法を試すことを躊躇していましたが、その囁きは日に日に大きくなり、夜も眠れなくなってしまいました。とうとう、優子は勇気を振り絞り、禁断の方法に挑戦することを決意しました。
その方法とは、深夜0時に風呂場に入り、換気扇の裏にある祟り神に自分の髪の一部を捧げるというものでした。そして、祟り神に「お願い、囁きを止めてください」と願うことで、囁きが止むというものでした。
ある晩、両親が再び出かけている隙に、優子は勇気を振り絞って深夜の風呂場へと足を踏み入れました。そして、覚悟を決め、髪の一部を切り取り、換気扇の裏へ差し込みました。
「お願い、囁きを止めてください。」優子は震える声で願いました。
すると、突然、囁きが止み、代わりに低く響く笑い声が聞こえてきました。優子は恐怖におののきながら、それでも祟り神に感謝の言葉を述べました。
次の日、優子は学校で友達に話を聞かせ、その勇敢な行動を称賛されました。そして、優子は安堵のあまり、友達にその禁断の方法を教えてしまいました。
しかし、その日から変わったことが起こり始めました。優子の家では囁きは止んだものの、友達の家で同じような囁きが聞こえ始めたのです。優子はすぐに気づきました。祟り神が友達の家に移ってしまったのだと。
優子は罪悪感に苛まれ、どうすれば祟り神を封じ込めることができるのか、再び図書館で調べ始めました。そして、遥か昔に祟り神を封じたという伝説の道具が存在することを知りました。
その道具は、ある神社に隠されているという噂がありました。優子は太郎と共に、神社へ向かうことを決意しました。
優子と太郎は、夕暮れ時に神社へ向かいました。古びた鳥居をくぐり、参道を進むと、風が冷たく吹き抜け、身の毛もよだつような気配を感じました。二人は震えながらも、伝説の道具を見つけるために境内を探し始めました。
やがて、石段の先にある本殿の裏手で、埋められた箱を見つけました。箱を開けると、古びた小さな鏡が入っていました。これが、祟り神を封じるという伝説の道具であることを優子は確信しました。
鏡を持って、優子と太郎は急いで友達の家へと向かいました。友達の家に到着すると、友達の家族も囁きに悩まされていることがわかりました。
優子はその鏡を持って風呂場に入り、祟り神へ向けて呪文のような言葉を唱え始めました。「神の鏡よ、我らの願いを叶え、この祟り神を封じ給え!」
すると、鏡がふいに光り輝き始め、その光が換気扇の裏へと向かいました。瞬く間に、囁きが止み、風呂場に静寂が戻りました。
祟り神は鏡に封じられ、再び囁きを聞くことはなくなりました。優子と太郎は、友達や家族から感謝され、平穏な日々が戻りました。しかし、二人はこの出来事から大切な教訓を学びました。
その後、優子と太郎は神社に鏡を返し、感謝の言葉を述べました。そして、二人は秘密を守ることを誓い、誰にも伝説の道具のことを話さずに過ごしました。
そして、あの恐ろしい祟り神が再び現れることはありませんでした。風呂場の換気扇裏に関する怪談は、優子と太郎の記憶の中にだけ残ることになりました。彼らは、禁断の秘密を胸に秘め、幸せに暮らすことができました。
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