かつて、とある田舎の村にクリムゾン・フットステップという都市伝説が広まっていた。この伝説は、村の中心を流れる川のほとりにある古びた橋を舞台としている。夜、この橋を渡ると、何者かによって血のように赤い足跡が現れるという。そして、足跡に沿って歩く者は、恐ろしい結末を迎えると言われていた。
ある雨の夜、若者たちが村でこの話を盛り上げていた。その中には、クリムゾン・フットステップの話を信じない者もいれば、深夜に橋を渡り足跡を探してみようという者もいた。その中の一人、勇敢な青年・タカシは、クリムゾン・フットステップの真相を確かめるため、橋を渡ることを決意する。
タカシは、腹をくくり、夜が更けたころに橋にたどり着いた。周囲は静まり返り、闇夜に響くのは遠くの川のせせらぎだけだった。タカシは、橋を進み始めた。すると、突如、濃い霧が立ち込めてきた。霧が晴れると、そこには血のように赤い足跡が現れていた。タカシは、足跡を目の当たりにし、恐怖に戦くものの、真相を突き止めるため前に進んだ。
足跡は、川のほとりの古い民家へと続いていた。民家の窓からは、不気味な光が漏れていた。タカシは、勇気を振り絞り、ドアをノックする。すると、ドアはゆっくりと開いた。そこには、顔に傷跡のある老婆が現れた。老婆はタカシを見ると、にっこりと微笑み、家に招き入れた。
…
老婆はタカシに、夫が村の者たちに悪戯を仕掛けていたことを明かす。彼女の夫は、昔から悪戯が好きであり、村に不安と恐怖を煽ることに喜びを感じていた。彼が仕掛けたクリムゾン・フットステップは、夜の闇を利用して赤いペンキで足跡を描くことで、都市伝説のような雰囲気を醸し出していたのだ。
老婆は、夫が亡くなる前、彼が病床で後悔の念にかられていたことを語った。悪戯を続けるうちに、村人たちの恐怖心が高まり、結果として彼らの心に傷を負わせてしまったことに気付いたからだ。夫は死の間際、悪戯をやめることを誓い、それと共にクリムゾン・フットステップの足跡も消えるはずだった。
しかし、タカシが目の当たりにした足跡は、それを否定するかのように現れていた。老婆は困惑し、夫の霊が悪戯を続けているのではないかと考え始める。タカシは老婆を助けるため、足跡の消える方法を探ることを決意した。
タカシは村の図書館で古文書を調べ、昔の民間信仰に関する記録を見つける。そこには、悪霊や亡霊を鎮めるための儀式が詳細に記されていた。タカシは、この儀式を行うことで、老婆の夫の霊を鎮め、クリムゾン・フットステップを消すことができると確信した。
タカシは老婆と共に、橋のたもとで儀式を行った。夜が明けると、橋の上には赤い足跡が消え、静かな朝が訪れた。村人たちも次第にこの話題を忘れ、平和な日々が戻ってきた。しかし、タカシだけは、クリムゾン・フットステップの足跡が消えた理由に疑問を抱いていた。
…
タカシはクリムゾン・フットステップの真相を追求し続け、儀式が終わった後も独自の調査を進めていた。彼は村の外れにある墓地で、老婆の夫の墓を見つけた。墓には、亡き夫の名前と共に、赤い足跡の絵が描かれていた。
ある晩、タカシは夢に老婆の夫が現れた。彼はタカシに告げる。「私の霊は鎮まったのではない。実は、私が死んだ後も、クリムゾン・フットステップは別の誰かによって引き継がれていた。私の願いを聞き届けてくれたその人物は、儀式の後も足跡を描いていたが、君が真実を追い求める姿に心打たれ、足跡を消す決心をしたのだ。」
タカシは夢から覚めると、その日から赤い足跡を描く人物を探し始めた。彼の調査の末、足跡を描いていたのは、村の青年であることが判明した。彼は老婆の夫の悪戯を継ぐことで、村の人々を驚かせて楽しんでいたが、タカシの熱心な追求に心を動かされ、足跡を消す決意をしたのだった。
タカシは青年と話し合い、彼がクリムゾン・フットステップの悪戯をやめることを確認した。その後、村ではクリムゾン・フットステップの話題が完全に消え、平穏な日常が戻ってきた。タカシはこの出来事を通じて、真実を追求することの大切さと、人々の心を変える力を知ることとなった。
それから数年後、タカシは都会で成功した記者となり、真実を追い求める姿勢を忘れずに仕事に取り組んでいた。そして、クリムゾン・フットステップの話は、都市伝説として彼の手によって語り継がれることとなったのだ。
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