冷たい風が吹き抜ける春のある日、小さな田舎町の小学校に新しい転校生がやってきた。名前は久美。目が大きく、いつも笑顔を絶やさない彼女はすぐにクラスメートの人気者となった。それはそう、彼女は新たな風をもたらした存在だったからだ。
ある日、久美は新しい友人たちとともに放課後、学校の敷地内で遊んでいた。その中には、地元の子供たちから伝わるさまざまな伝説や怪談話を楽しみにしていた彼女の親友、ユリもいた。ユリは地元で生まれ育ち、地元の怪談話に詳しかった。久美が新しい町に馴染む手助けをしていた。
ユリは何気なく、学校の古いトイレの話をした。それは校舎の3階にある女子トイレ。そこには「トイレの花子さん」と呼ばれる、おかっぱ頭の女の子の霊が住んでいるという噂だった。トイレの個室を3回ノックし、「花子さんいますか?」と問いかけると、「はい」と返事がして、赤いスカートの女の子が出てきてトイレに引きずり込まれてしまうというものだ。
久美はその話を聞き、初めて聞く地元の怪談話に興奮した。そして、ユリと他の友人たちに提案した。「それなら、私たちで花子さんを呼び出してみようよ!」
久美の提案に、友人たちは驚いた。しかし、久美の元気な笑顔と冒険心に引き寄せられ、みんなは久美の提案に同意した。そして、学校が閉まる前に、久美とユリ、他の友人たちは校舎の3階のトイレに向かった。
静まり返った校舎の中、女子トイレの前に集まった彼女たちは、互いに見つめ合い、深呼吸をした。そして、久美が最初にトイレのドアを3回ノックし、「花子さんいますか?」と声をかけた。しかし、何も応答はなかった。
…
数日が過ぎ、久美と友人たちは再び放課後に3階の女子トイレの前に集まった。学校が閉まる前の時間、廊下はすっかりと静まり返っていた。久美は再び最初の個室のドアを3回ノックし、「花子さんいますか?」と尋ねた。しかし、再び応答はなかった。
次にユリが2つ目の個室のドアをノックし、「花子さんいますか?」と尋ねた。だが、やはり何も応答はなかった。友人たちは少し失望し、だけど同時にホッとしていた。
そして、最後に久美が3つ目の個室のドアを3回ノックし、「花子さんいますか?」と問いかけた。それまでの静寂を破り、「はい」という小さな声が返ってきた。みんなは息を呑み、その場に凍りついた。
ドアがゆっくりと開き、赤いスカートをはいたおかっぱ頭の女の子が姿を現した。彼女の顔は淡い青白さで、眼は何も見ていないようだった。彼女は久美を見つめ、手を差し伸べた。
久美は驚きと恐怖で一瞬固まったが、次の瞬間、花子さんの手を取った。その瞬間、久美はトイレの中に引きずり込まれ、ドアはゆっくりと閉まった。
ユリと他の友人たちは恐怖で動けず、ただ呆然とトイレのドアを見つめていた。そして彼女たちは、今までにない恐怖と現実と向き合うことになった。
…
トイレの個室から久美が消えてしまった後、ユリと他の友人たちは慌てて教師に報告した。しかし、教師たちは信じようとしなかった。警察も同様で、久美の失踪は一大ニュースとなり、町中が騒然となった。
一方、久美はトイレの個室の中に引きずり込まれた後、自分が異次元のような場所にいることに気付いた。それは彼女が知っている学校のトイレとは全く異なる、無限に広がるトイレの世界だった。
久美の前には、花子さんが立っていた。彼女は久美に微笑みかけ、彼女が驚かないように優しく話しかけてくれた。花子さんはかつて生きていたときのこと、死後の世界に迷い込んでしまったこと、そして孤独だったことを話した。
久美は花子さんの話を聞き、彼女の孤独と悲しみを理解した。花子さんは友人が欲しかっただけだった。そして、久美は花子さんに約束した。「私が帰れる日が来たら、みんなに花子さんの話をして、花子さんが一人じゃないことを知らせるから」と。
久美と花子さんは、それから何日もの間、無限に広がるトイレの世界で過ごした。彼女たちはお互いのことをもっと理解し、本当の友人となった。
その一方で、ユリと他の友人たちは久美を探し続けた。しかし、久美はどこにも見つからなかった。そして、彼女たちは絶望的な気持ちになった。しかし、ユリはある決意を固めた。それは、久美を探し出すこと。そして、彼女は再び校舎の3階のトイレに向かった。
…
ユリは校舎の3階のトイレの前に立ち、深呼吸をした。彼女は久美が消えた日の出来事を思い出し、3つ目の個室のドアを3回ノックした。そして、「花子さんいますか?」と尋ねた。
応答は「はい」という小さな声だった。ドアがゆっくりと開き、再び赤いスカートをはいた花子さんが現れた。ユリは恐怖で一瞬固まったが、久美を思い出し、勇気を振り絞った。「久美はどこにいますか? 彼女を返してください」と頼んだ。
花子さんはユリをじっと見つめた後、ゆっくりと微笑んだ。そして、彼女の後ろから久美が姿を現した。久美は驚いた顔をしてユリを見つめたが、すぐに笑顔になった。
久美は花子さんに手を振り、ユリの方に歩いていった。花子さんは久美を見送るように立っていた。久美はユリに抱きつき、ユリもまた涙を流しながら久美を抱きしめた。
その後、久美は学校全体に花子さんの話をした。花子さんが一人じゃないこと、友人が欲しかっただけで、何も悪いことをしていないことを伝えた。学校中の生徒たちは驚いたが、花子さんのことを理解し、受け入れていった。
それからというもの、学校の3階のトイレは特別な場所となり、生徒たちは敬意を持って花子さんに接するようになった。そして、久美とユリ、他の友人たちは再び平穏な日々を送ることができた。そして、花子さんもまた、孤独ではなくなった。
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