「深夜の遠州鉄道。昔から”異界への窓口”という噂が立つこの路線、君はその噂を信じるか?」
「信じるわけないだろう。まあ、そうだよな。でも、そのうち本当に信じざるを得なくなるんだ。まあ、それはおいといて…」
「私たちは大学のサークル仲間4人で、”都市伝説ツアー”という名の冒険に出かけた。目的地は、遠州鉄道沿線にあるとされる幻の”きさらぎ駅”。」
「私たちが電車に乗ったのは深夜0時。列車内はほとんどが空席で、なんとなく不気味な静寂が漂っていた。」
「”さあ、きさらぎ駅、出てこいよ!”と冗談交じりに呼びかける友人。それに対し私たちはくすくすと笑った。」
「しかし、電車が進むにつれて、その笑いは少しずつ消えていった。なぜなら、私たちが乗った列車は、いつの間にか予定の終点を過ぎていたからだ。」
「皆で顔を見合わせ、不安そうに列車の窓の外を覗き込む。しかし、そこには見覚えのない暗闇と、所々に点在する街灯の光だけだった。」
「”なんだこれ、終点過ぎてるぞ!”と驚く友人。他の友人はスマホを取り出し、地図アプリを開いたが、ピンがどこにも止まらない。」
「”こ、これって…”と言葉を詰まらせる私。そして、そこで気付いた。列車の進行方向の先に、何か小さな光が見えるのだ。」
「”あれ、駅だろうか?”と疑問に思いながらも、その光が大きくなるにつれて、私たちの胸には確信が湧き上がってきた。」
「それは、まるで昔の映画のような小さな無人駅。そして、その駅名表示には、”きさらぎ駅”と書かれていた。」
「列車がゆっくりと停車し、ドアが開く。そして、私たちはその門出に立つ。」
…
「列車が駅を出て行く音が静まり返った夜に響き渡った。私たちはただ、息をのんでそれを見送った。そして、再び静寂が戻る。”きさらぎ駅”に私たちは残された。」
「私たちは無言で駅舎を見回した。木造の古い建物、灯りのついた待合室、そして、何もないプラットフォーム。」
「”本当にこんな駅があるんだな…”友人の一人がつぶやいた。私たちはうなずき、心中で同感した。」
「ある友人がスマホを取り出し、この場所を撮影しようとした。しかし、どうも上手く撮れない様子。画面に映るのは暗闇と、ぼんやりと浮かび上がる駅舎だけだった。」
「”なんだか、おかしいな。ここ、電波が届いてないのかな…”と友人が不安げにつぶやく。それを聞いた私たちは、自分たちのスマホも確認した。だが、結果は同じだった。電波が全く届いていない。」
「”こ、これって、どういうことなんだ?”パニックになり始める友人。しかし、私たちはただ無言で頷いた。何も言えなかった。」
「その時、突如として駅舎から古い放送が流れ始めた。”きさらぎ駅に到着いたします。降車の際はお忘れ物のないようお気をつけください。”その声は、古びたスピーカーから聞こえてくるものの、誰もいないはずの駅から流れる放送に、私たちは恐怖を感じた。」
「私たちは無言で駅舎に向かった。そこには誰もいないはずだ。だが、放送が流れたということは、何か意味があるのかもしれないと思ったからだ。」
「古い木のドアを押し開けると、中は驚くほど清潔で、灯りが落ち着いていた。しかし、そこには人の気配はなかった。」
「友人が古いタイムテーブルを指差し、”次の電車はいつ来るんだろう…”とつぶやいた。だが、そのタイムテーブルには、時間どころか日付すら記されていなかったのだ。
…
「待合室のベンチに座り込む私たち。窓の外には漆黒の闇が広がり、何も見えない。ただ、時折遠くで聞こえるような音だけが、私たちの心臓をドキドキさせた。」
「”さっきから、何か聞こえない?”と耳を澄ませる友人。その言葉に、私たちも耳をすませる。すると、確かに何かが聞こえる。それは、遠くで鳴っているようなベルの音だった。」
「”電車が来る音…?”と思いながらも、すぐにその考えは頭から消えた。なぜなら、その音は遠くから聞こえてくるのではなく、どこか近くで鳴っているように思えたからだ。」
「”ここで、何かが起こるのかもしれない…”とつぶやく友人。その言葉に私たちは頷いた。だが、それが何なのか、私たちはまだ知らない。」
「しばらくすると、ベルの音は止み、再び静寂が戻った。しかし、その後も何かが起こるのではないかという不安感だけが、私たちの心を揺さぶり続けた。」
「”どうしよう、ここから出られないのかな…”と不安げにつぶやく友人。その言葉に、私たちもうなずいた。だが、何をすべきか、私たちはまだ分からない。」
「”待つしかないんじゃないか…”と呟く私。それに対し、友人たちはただ静かに頷いた。そして、私たちは再び沈黙に包まれた。」
「時間が経つにつれ、私たちの緊張感は少しずつ高まっていった。しかし、それと同時に、何かが起こるのを期待する気持ちも高まっていた。」
「そして、その時だった。突然、駅舎の外から何かが通り過ぎる音がした。それは、金属が摩擦するような、ギシギシという音だった。」
「”あれは、電車の音…?”と驚く友人。私たちは窓の外を見た。しかし、何も見えない。ただ、その音だけが、私たちの耳に刻まれていった。」
「その後、何も起こることはなかった。ただ、その音だけが、私たちの心に深い恐怖を植え付けるのであった。」
…
「その音が遠ざかり、再び静寂が戻った。しかし、その静寂は今までとは違っていた。何かが確実に変わった、と感じられる静寂だった。」
「”なんだ、あれは…”とつぶやく友人。その言葉に私たちもうなずいた。そして、何かが変わったことを確信した。」
「私たちは再び外を見た。しかし、何も変わっていない。ただ、あの音だけが、私たちの心に深い影を落としていた。」
「そして、その時だった。突然、放送が流れ始めた。”次の電車がまもなく到着いたします。ご乗車のお客様は、お早めにプラットフォームへお進みください。”」
「私たちは思わず顔を見合わせた。そして、慌てて駅舎を出てプラットフォームへ向かった。」
「見ると、遠くの闇から何かが近づいてくるのが見えた。それは、まるで幻影のような列車だった。私たちは息を呑み、その到着を待った。」
「列車がゆっくりと停車し、ドアが開いた。私たちは迷わずその中へ飛び乗った。そして、列車はゆっくりと動き始めた。」
「私たちはただ、その列車に乗っていた。その先に何が待っているのか、私たちはまだ知らない。しかし、きっとそれは、新たな冒険の始まりだろう。」
「そして、私たちは再び深い闇の中へと消えていった。ただ一つ確かなことは、私たちが”きさらぎ駅”を訪れたという事実だけだった。そして、その証拠は、私たちの心の中に深く刻まれている。」
「そう、私たちは”きさらぎ駅”を訪れた。そして、その駅は、私たちの心の中に永遠に存在し続けるだろう。その駅は、都市伝説ではなく、私たちの記憶の中に存在する、真実の場所なのだ。」
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