ある晩、夜遅くに一人の男性が車で山道を走っていた。仕事で疲れていた彼は、家まであと少しというところで、道端に立っている若い女性を見つけた。彼女は明らかにヒッチハイクをしている様子だったので、男性は躊躇せずに車を停め、彼女を乗せることにした。
女性は長い黒髪に青白い顔をしており、古びたワンピースを着ていた。彼女は感謝の言葉を述べた後、目的地がある古い洋館だと伝えた。男性はその洋館がこの町で有名な幽霊屋敷だと知っていたが、彼女のためにそこまで連れて行くことにした。
山道を進むにつれ、雨が降り出し、外の視界が悪くなっていった。男性は女性に話しかけようとしたが、彼女は無言で車の窓の外を見つめ続けていた。彼は彼女が何か困っていることがあるのかと心配になり、無理に話すことをやめた。
とうとう洋館に到着し、男性は車を停めて彼女に声をかけた。しかし、彼女は突然消えてしまった。彼は目を疑い、車の中を何度も見回したが、彼女の姿はどこにもなかった。驚きと戸惑いで固まった彼は、車から降りて洋館に近づいてみた。そこで彼が見つけたものは、洋館の玄関先に濡れた足跡が一つだけ残されている光景だった。
男性は洋館の中に入っていく決意をし、恐る恐るドアを開けた。洋館の中は薄暗く、埃が舞っていた。彼は懐中電灯で照らしながら、女性の足跡を追いかけた。足跡は階段を上って、2階の一室に続いていた。部屋の中に入ると、彼は古い日記帳が落ちているのを見つけた。
日記を拾って開くと、女性の名前が書かれていた。彼女の名前は「サキ」というらしい。日記には、サキがこの洋館で過ごした日々の様子が詳細に綴られていた。次第に男性は、サキが何十年も前に亡くなったことを知る。その死の原因は、病気と思われたが、彼女の死後も洋館で幽霊として彷徨っているという噂が町では囁かれていた。
男性は日記を読み進めるうちに、サキが生前に深く愛していた人がいたことを知る。彼はその男性が彼女の遺品を手に入れるために、洋館を訪れていたが、何者かに襲われてしまい、そのまま消息を絶ってしまったことが書かれていた。サキは彼が戻ってくることを待ち続け、彼女自身も病に倒れるまでその願いを捨てなかった。
日記を読んだ男性は、サキが彼を愛する男性だと思い込み、幽霊となってヒッチハイクをし、助けを求めているのではないかと考えた。彼は決意を固め、サキの魂を救うために、彼女の愛する男性の遺品を探すことにした。
男性は洋館の奥へと進み、サキの愛する男性の遺品を探し始めた。古い部屋や押入れを調べながら、彼はとうとう小さな金庫を見つけた。金庫の鍵は見つからなかったが、彼は日記に記されていた思い出の日付を元に、無事に金庫を開けることができた。
金庫の中には、サキと彼女の愛する男性が撮った写真が入っていた。その写真の裏には、「永遠に愛してる」という言葉が手書きで書かれていた。男性はその写真を大切に持ち帰り、翌日の夕方、再び洋館へ向かった。彼はサキの霊が現れるのを待ち、写真を手にしたまま待機した。
夜が更けてくると、洋館の入口に再びサキの姿が現れた。彼女は驚いた顔で男性を見つめたが、彼は微笑みながら写真を差し出した。サキは涙を流しながら、写真を受け取り、彼に感謝の言葉を述べた。その瞬間、彼女の姿は次第に透明になり、やがて消えてしまった。
サキの魂が解放されたことを確信した男性は、安堵の涙を流しながら家路についた。以降、この町ではバニシング・ヒッチハイカーの話は聞かれなくなり、洋館も次第にその怪奇な雰囲気を失っていった。しかし、人々は今でも、あの夜の出来事を都市伝説として語り継いでいる。そして、男性は誰もが幸せな結末を迎えることを願い、人々にこの物語を伝え続けた。
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